小説書きさんに100のお題を元に小説のワンシーンを書く企画です。
お題はこちら
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 最後の一人を前に俺は一度深呼吸した。そいつは、傍らにあったコルク抜きを震える手で掴み、武器代わりに振り回してきた。もう、敵を倒そうとしているわけじゃない。完全に防御体勢だ。周りの仲間が全員やられて狂乱してるのかも知れない。
「くるな、くるなー!」
 とんでもないものでも見たかのような目で睨み付けられた。化け物か、俺は。まあ、こいつが化け物扱いしてくるのも否定はしない。ここを守ってた人数は、いちいち数えてるわけじゃないんで何とも言えんが、ここに来るまでに少なくとも二十人はぶっ倒してる。きちっと並んでいたソファーセットは見る影もなく切り刻まれ、一脚はには銃弾の跡も数発。盾替わりにしていたせいで縦に起き上がたままだ。一脚かろうじて同じ位置に残っていたソファーには、血がこびりついた斧が刺さっている。我ながら、こんな中よく銃なしで生き残れたもんだ。
 威嚇のつもりで相手を睨んでると、どこか甘い香りが鼻をついた。さっき棍棒代わりに使ったワインだ。
 家主の趣味なんだろうが、飾り棚にあったワインは一本残らず割り散って、そこいら中からアルコールの匂いがぷんぷんする。多分、札束単位で取引されているものだろう。くそっ、一本くらい残しとくべきだったか。
 おっと、誤解のないように言っておく。あちらこちらで気絶してる親父ども、多少手荒な事はしたが、誰一人殺しちゃいない。この先の金庫にしまってある資料を見るのに邪魔だから、少しの間眠ってもらっているだけだ。運が悪い奴は、この先一、二ヶ月は病院のベッドから起きあがれないかも知れないが、その辺りは自分の運の悪さを呪ってもらう他ない。
 そして、残りの一人。研修などは受けているせいか構えは堂々たるもんだが、見たところそんなに腕っぷしは強くない。なるべく戦闘から離れて逃げるようにして動いてたらこうなった。そういった感じの冴えない警備員。まあ、こういうタイプの方が、どこの世界でも生き残る率が高いのかもしれない。
 相変わらず武器を振り回すばかりでこちらに向かってくる気配もない。ここまでくると見てるこっちが憐れになってくる。連中も警備が仕事だ、必死なんだろう。
 けど、こっちも仕事だ。とっとと先に進まないと、また厄介なことになる。
「ごめんよ」
 一言詫びを入れて俺はコルク抜きを振り回す腕を掴んだ。あまりじたばたされると、下に響いてまた人が増える可能性がある。手首を通常と逆の方向に曲げると、握り締めていた武器は自然と床に落ちた。
 大人しくなった所で鳩尾に一発ぶち込む。ヒット。奇麗に入ったな。
 ようやく静かになった部屋の中、俺は次の仕事に取り掛かった。
 金庫は指示通りに操作したら無事に開いた。
「げ、作戦の帳簿?」
 こんなもんは後回し。数字と睨めっこするのが一番苦手だ。
 他はっと……。

「御苦労でした。報酬はいつもの通りに」
 資料があった事を連絡すると、通話は僅か三十秒で切られた。
 労いの言葉も事務的だ。むかつく女。
 いつもの通り、かぁ。
 いつからこんな毎日がいつもの通りになっちまったんだろう。
 報酬の為にあちらこちらを周り、情報を集める。いつからそれが普段の毎日になったんだろうな。
 情報屋と呼ばれる連中にも顔を覚えられて、時には今回みたいに強引な侵入で資料を奪って……。
 そりゃあどれもこれもてめぇの頭で考えてやってきたことだ。ここで文句垂れるのも筋違いなのはわかってる。
 ただ、やってることが正しいのか、時々判断がつかなくなるんだ。組織がやってることが全部正しいとは思えねぇし、向うも多分そうは思っちゃいない。
 俺が動いて、その結果が組織に利をもたらす。その報酬を使って俺はまたヤツを探す。ギブアンドテイクってやつだ。
 ヤツと出会った事が、今俺がここにいる理由の全て。そう言っちまえば格好いいんだろうが、それはそれでヤツに人生振り回されているようで納得がいかない。
 それとも、こいつが死んだじいさんの言ってた、なるべくしてなった人生ってやつなんだろうか。
 少しずつ情報が明かになってくれば、ヤツにも近づける。
 傷の絶えない血生臭い人生、そいつが俺の毎日なら、それはそれで上等だ。
 少なくとも、何もしないで気付いたら日が暮れる一日を過ごすよりはずっといい。アンタも、そう思わないか? 

59.凡庸 でした。

え? 全然凡庸じゃないよって??(汗)
平和な光景書いてても面白くならなそうだなーと思ったのと、
Bunp of chickinのStage of the ground聞いてて妙に書いてみたい人物ができあがっちゃったからなのでした。( ̄▽ ̄)

飛べない君は歩いていこう、絶望と出会えたら手を繋ごう♪ 
の辺り聞いててふっと思いついて。

君をかばって、散った夢は、夜空の応援席で見てる
強さを求められる君が、弱くても、唄ってくれるよ
ルララ

あの月も、あの星も、全て君の為の舞台照明
叫んでやれ、絞った声で、そこに君が居るって事
迷った日も、間違った日も、ライトは君を照らしていたんだ
君が立つ、地面はホラ、360度いつだって〜♪

書いてる間ずっと歌いっぱなしでした。
ええ歌詞だよなー( ̄▽ ̄)

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